ちょっとした工夫

東京都立葛西工業高等学校 井上 健
2005.5.1


1.レインボーライトペン

100円ショップ「ダイソー」で見つけた、赤・黄・青3色発光ダイオード付きボールペンです。中国製でボタン電池(LR44)3個付き(テスト用)。スイッチを押す毎にLEDON-OFFし、点灯する度に異なる7色+7色の連続的変化が現れます。点灯順序は、赤→黄→青→赤+黄→黄+青→青+赤→赤+黄+青→(赤→赤+黄→黄→黄+青→青→青+赤→)以下(  )内繰返し、です。[その後、点灯順序が変更になった模様。05.5.1追記]

透明プラスチック製の軸部で色が混ざり、7色の光が出ているように見えます。回折格子レプリカを通してみると、混ざっている色がわかります。透明部分を外すと、軸内に3個のLEDが納められ、スイッチを押す毎に順次点灯していく様子が確かめられます(上写真)。
ともかく安いので、生徒に1人1本渡して観察させることができます。光の3原色や回折の実験にたいへん便利です。RGBでなくRYBなのが残念で、色の違いがややわかりにくいですが、横浜物理サークルの例会速報1)によると、別の100円ショップでRGBの組み合わせのものもあったそうです(同じく中国製、ボールペン機能なし)。なお、添付の電池はテスト用のため、寿命の短いものもあります。

1)YPC例会速報 2004.5.22 レインボースティック  (山本明利氏の発表)

2.簡易真空実験器を使った実験

今年の夏期大会で紹介された、横浜物理サークル開発の、50ccディスポーザブル注射器+プラスチック密閉容器(「ダイソー」で購入)の簡易実験装置の、ちょっとした用途拡張です。これの定番は、真空中での風船・マシュマロ・吸盤の挙動、ラップ割り、減圧沸騰、霧の発生(断熱膨張)などです。
この容器に水を入れ、「タレびん」とナット(いずれも「ダイソー」で購入)製の浮沈子をちょうど底に沈むくらいにして入れ、容器上部の空気を抜いていくと、浮沈子から水が出て行き、浮かび上がります。この実験も後で調べたら、横浜物理サークルで紹介2)されておりました。

ここで、容器上部の空気を多めにし、浮上後もなお空気を抜き続けると、浮沈子内の水面は下がり続け、ついに浮沈子内部は空気だけとなります。浮沈子は容器の水面上に大きく「頭を出し」ます(上左写真)。さて、ここでさらに容器の空気を抜くとどうなるでしょう?
やってみると、浮沈子の口から空気が泡となり、ピストンを引く度に出てきます(上右写真)。また、容器に空気を少しづつ入れる(チューブを注射器から外し、その先端を指で押さえながら少しづつ緩める)と、浮沈子内に水が入り込み、水面に出ていた「頭」が下がり出し、あるところで一気に沈むことがわかります。
普通のペットボトル製浮沈子では、ボトル上部の空気の圧力の変化と浮き沈みの関係が、今一つわかりにくいものです。これを見せ、じっくり考えさせるのもいいと思います。なお、この実験を行うには、背の高い密閉容器を選び、チューブを差し込む穴を容器側面の上の方に開けねばなりません。

もう1つの実験は「ラップ割り」の変形です。発泡スチロール製のカップを容器の口にはめ、空気を抜いていくと、カップが容器に吸い込まれ、景気のいい音をたてて底が抜けます。これは、減圧沸騰の湯を入れるための容器を使い、生徒が勝手に始めた実験です。ラップより変形が小さく、スリルはやや欠けますが、底がきれいに丸く抜けるのが見物です。左の写真はビデオの1コマで底が抜けた瞬間ですが、よく見ると底部から霧が発生しているのがわかります。

2)YPC例会速報 2004.3.14 減圧タンクのオプション2種 (大熊華子氏のアイデア)

3.ピンホールポラロイドカメラ

ヨドバシカメラ新宿店で見つけた、組立て式ピンホールカメラにポラロイド写真ユニットを取り付けるキットです。ボディ(二重)は厚紙を折り曲げて作ります。ピンホールは直径0.3oと0.4oのものが付いており、マウントに固定したものをボディに両面テープで貼って使います(上中写真)。このテープの粘着力が弱いため、マウントごと外し、明るさに応じて「レンズ交換」できるわけです。光線漏れを防ぐため、黒い両面テープや遮光テープが入っており、はさみ・カッターだけで、組立て可能です。フィルム毎の露光時間目安表のシールを、ポラロイドユニットに貼付けて使います(上右写真)。
撮影したところ、ボディの剛性が不足気味で、シャッターの遮光テープをはがし戻す際、三脚に固定してもボディが変形・振動し、大きくブレることがありました。三脚取り付け台とボディとの間にも隙間があります。前任校では、井田屋文夫先生(現都立戸山高)が作られたピンホールポラロイドカメラのボディを、後藤道夫先生の工作教室で製作した「ゆうパック」製ボディに換装し、使用していました(上右写真2枚)。ボディはこれくらい頑丈な方が使いやすいようです。
セットには、セピア調モノクロフィルム20枚と撮影例・フィルム紹介の冊子が付いています。フィルムの値(2000円以上)を考えると、7500〜8000円という価格は妥当かもしれません。白黒フィルムはISO80〜3200まで感度が揃っており、ISO3000だと蛍光灯の点いた教室で10秒以内で撮影可能です。カラーは独特の発色となります。
なお、秋月電子のレーザーポインタキットの赤色光(波長635nm)をやや広がるビームにして、上述の自作ピンホールカメラに入射させたところ、円孔による回折模様(明暗の同心円)が写りました(左写真)。露光時間はISO125カラーで十〜数十秒でした。1oに4〜5本程度の干渉縞です。なお、ピンホールは以前上智大の石川先生から頂いた直径0.34oのものに変えてあります。

4.ラブメーターと水飲み鳥

水飲み鳥では、頭の中の気体が熱を取られて凝縮・圧力低下することにより、尻の液体が上がる。ここが頭の外の水の「気化熱」とあわせ、わかりにくいところです。「ダイソー」で水飲み鳥と似た構造のラブメーターが150円で買えるようになった(中国製)ので、これを班に1個って触らせながら、考えさせてみました。
まず、ラブメーターで下の球を温める代わりに、上の球に氷のかけらをつけ、冷やしてみます。中の液は上がります。では、上の球にアルコール(エタノール)を霧吹きで吹きかけたら? アルコールのついた皮膚を球だと思えば、アルコールの蒸発に伴い球は冷やされるはずです。やってみると、これでも液は上がります。ここでおもちゃの扇風機(これも100円!)で、上の球に風を送ると、蒸発が促進され、液はさらに早く上がります(下5写真)。

では、止まっている水飲み鳥の乾いた頭にアルコールを霧吹きで吹きかけたら? 尻から頭に液が上がり、鳥は動き出します。扇風機をかけながらアルコールを噴射すると、動きが速くなります。逆に、アルコールを頭に染みこませて動いている鳥(酒飲み鳥?)に、事前にアルコールを噴霧しアルコール蒸気で飽和させた水槽をかぶせると、短時間で鳥は止まります(下6写真)。

沸点が低く蒸発しやすいアルコール(エタノール)を使うことで、蒸発に伴う熱の移動が鳥の運動の原動力となっていること、空気中のアルコール濃度により、アルコールの蒸発速度が変わり、したがって、単位時間の熱の移動量、鳥の運動周期が変化することが、考えやすくなります。周期を変える別の方法を考えさせるのも、おもしろいでしょう。
また、下写真のようにドライヤーでラブメーターや平和鳥の球部に温風・冷風をあててもいろいろな実験ができます。

液は上がる 液は下がる 液は上がる 鳥は動き出す(短周期)

水飲み鳥は、「王様のアイデア」で1000円で購入しました。なお、ラブメーターは上の球のガラスが薄く、割れやすいので注意が必要です。

5.超簡単蒸気タービン

アルミの空き缶から噴出する水蒸気で回転する反動蒸気タービンは、良く知られています。この軸受を、鉄釘と強力磁石(アルニコまたはネオジム)にして、簡単にできるようにしました。缶のキャップの裏から太めの鉄釘をゴム栓を台にして打ち込みます。一方、缶の上部に2〜4カ所、対称の位置にコンパスの針を突き立て、直径1o程度の孔を開け、コンパスをこじるように倒して、噴出ノズルとします。缶に深さ1p程度の水を入れ、キャップを締めて鉄釘の先端をスタンドに固定した強力磁石の水平面に鉛直にぶら下げます。ガスバーナーまたは固形燃料(「ダイソー」で3個100円)で缶の下から点火すると、1分くらいで回転し始めます。

作り始めてから回り出すまで、3分もかからないこともあります。このタービンは想像以上に高速回転し、楽しめます。ただし、高速域では歳差運動のような動きを起こして、バーナーの上に落下することがあります。水を入れすぎると、遠心力で回転放物面状に内壁をはい上がってきた高温の水がノズルから噴出し、反動でバランスを崩し落下しやすくなります。なお、パチンコ玉を埋め込んだゴム栓を缶にして、もう1つのパチンコ玉を磁石との間にはさんだ軸受けも、点接触で実にスムーズに回ります。この鉄球と磁石による支持法は、埼玉県の先生のアイデアのようです。

6.ライデンフロストダンス・膜沸騰の観察

高温の金属板上に水滴を落とすと、丸い滴となって板上を転がり回り、なかなか蒸発しません。これは、水滴と板の間に熱を伝えにくい水蒸気の膜ができる(膜沸騰)からです。薄いアルミ板の周囲を軽く折り曲げて皿状にしたもの(燃焼皿でも可)をガスバーナーに載せ、弱火で加熱しながら、スポイトで水滴を落としていくと、容易にこのライデンフロストダンスが観察されます(左写真)。バーナーを消してしばらく経ち、板の温度が下がると、突然蒸気膜が破れ、液相の水が板に直接触れるようになり、激しい沸騰(核沸騰)が生じます(遷移)。
また、バーナーで高温(約1000℃,オレンジ色)に熱した銅ブロック(100g程度,比熱測定用の円柱体で可,下左写真)をビーカー内の室温(20〜30℃)の水(50〜70cc)に投入すると、投入直後は予想に反し、「静かな沸騰」が生じます(下中写真)。ところが、銅の温度の低下により膜が破れる最後になって、ビーカーが動き出すほどの「激しい沸騰」が生じます(下右写真)。

この実験では、高温の銅ブロックがガラスに触れるため、ビーカーの底が一部融けたり割れたりすることがあります。ぞうきんなどの上にビーカーを置いて実験する方が良いでしょう。立方体のブロック(「東急ハンズ」で売っている2p角のもの)より、円柱体のものを横倒しにして入れ、ビーカーのガラスとの接触面積を減らすようにした方が、割れにくいようです。また、ブロックが小さかったり(1p角立方体)水量が多かったりすると、投入後すぐ遷移してしまい、膜沸騰がよく観察できません。逆にブロックが大きくなる(数p角立方体)と、加熱時間がとても長くなり、授業時間では扱いにくくなります。ブロックの材質は融点や比熱の関係からアルミや真鍮より銅が一番良いようです。バーナーは通常のブンゼンバーナー1個で大丈夫ですが、炎の大きさやブロックを入れる位置によって、赤熱するまでの時間(通常数分)が大きく変わります。加熱に伴う銅ブロックの色の変化(赤黒→赤→朱→オレンジ→やまぶき)も、教室の照明を落とすとよくわかります。加熱は、スタンドにるつぼばさみを固定し、はさみの先に円柱体のリングを引っかけるようにすると安全です。ビーカーへの投入は、ラジオペンチでリング部をはさんで行います。ビーカーはブロックのすぐそばに置いておきます。
いずれの現象も、今年度初めて生徒実験にしてみました。操作上の注意と禁止事項を事前に徹底すれば、危険はありません。これらの現象は、強い照明(OHPやスライドプロジェクターでも可)をあてながら、ビデオの高速シャッター(1/4000秒)を用いて撮影・コマ送り再生すると、水滴や蒸気膜・気泡の挙動が手に取るようにわかり、たいへん楽しめます。
たとえば、ライデンフロストダンスの遷移の瞬間は一瞬のうちに水滴が砕け散るように見えますが、下の写真のように、水滴底部の水蒸気膜の破れ→液相の水が直接高温面と接触→多数の水蒸気泡の発生・膨張(2)→水膜が風船のように膨張→高温面からジャンプ(3,4)→水膜が面上に落下・衝突(5)→衝撃で水膜が小さい水滴に分裂(6)→小水滴のライデンフロストダンス、という過程をたどっており、驚かされます。

1 2 3
4 5 6

また、銅ブロックの投入(下写真)では、投入直後、水蒸気膜で包まれたブロックの上面から浮力で離脱する気泡(1)が、水面までの間に縮み消滅していることもわかります。これはブロック周囲の水は沸点以下のため、水蒸気泡から「熱が奪われ」液相の水に戻っているからです。この過程で、逆に周囲の水は「熱をもらい」温度が上昇していきます(もちろんブロックから水蒸気膜を通過しての熱伝達もあります)。したがって、時間が経つにつれ、ブロックから離脱・上昇する気泡は消えにくくなり、大きなまま水面に到達するようになります(2)。

1 2 3 4
5 6 7 8

さらに時間が経過すると、銅ブロックの表面温度の低下に伴い、ブロックを包む水蒸気膜が不安定化し、上面から離脱する気泡も奇怪な「おばけ」のような「合体気泡」となってゆきます(3,4)。水温が沸点近くなると、こうして、ビーカーの中は激しく流動する「コップの中の嵐」となって(5,6)、やがて遷移(7)を迎えます。核沸騰になると、ブロックを包んでいた水蒸気膜がなくなるため、それまで全反射のため、「銀色」に見えていたブロックが「銅色」に戻ります(8)。

投入後、遷移までの水温の変化をデジタル温度計で調べたところ、左図のような指数関数的なグラフが得られました。核沸騰は膜沸騰より熱を伝えやすく(熱伝達率が大きく)、横軸に表面温度(と沸点の差)、縦軸に熱流束を取ったグラフを作ると、下左図3)のようになり、これを沸騰曲線といいます。このため、高温面上の液滴の寿命は、下右図4)のように、温度が上がるにもかかわらず、蒸発までの時間が増える部分が出るわけです。


3)武山・大谷・相原『大学講義 伝熱工学』(1983)
  丸善,p144
4)甲藤好郎『伝熱概論』(1964) 養賢堂,p332


以下は、2002年の夏期大会でポスター発表した「工夫」の一部です。

7.速度の合成

「船が川に直角に進もうとして流されると…」など「速度の合成」のところで、生徒に「斜め上流に向かおうとして流されると、へさきが『斜め』を向いたまま、川に直角に進むというのは本当?」とか言われませんか?

これを、単2乾電池・30p直定規・B5下敷き・工作用紙(緩やかな斜面にする)・セロテープだけで、実演します。定規を机上にセロテープで固定し、これをガイドとして下敷きを手で「一定の速度」で滑らせます。これが川の流れにあたります。次に、この「動く下敷き」の上に、工作用紙の斜面から、いろいろな角度で電池を転がり落としてみます。「進む」と「流される」を同時に行うとどうなるか、一目瞭然です(上写真)。
この実験は、運動するものが「球」でなく「円筒」であることがミソです。また、斜面の下端を少しだけ下敷きの上に載るようにしておくと、電池がスムーズに下敷きに乗り移ります。装置の真上からビデオで撮っておき、スロー再生を見せるだけでも効果的です。

8.円運動と向心力・接線方向速度

「円運動には向心力が必要」「向心力がなくなると軌道の接線方向にとんでゆく」

これを、ビー玉とセロテープの輪だけで確かめます。机上で輪の中にビー玉を入れ、輪を揺すると、ビー玉は輪の内壁に沿って円運動します。輪の壁からの垂直抗力が向心力となるからです。ここで、輪をパッと上に外すと、ビー玉は輪の接線方向に転がってゆきます。輪を揺すってビー玉を動かした後、しばらく輪を静止させてみるのがコツです。生徒は輪を激しく揺すりながら、外してしまいがちです。輪を止めビー玉が円運動をしていることを確かめてから、輪を外します。この実験もビデオに撮り、スロー・コマ送り再生すると効果的です。

9.電車のv−tグラフ

電車(京成電鉄3700形)の運転台の、時刻・速度・走行距離等をデジタル表示する「状態情報」パネルをビデオ撮影しました。これに秒単位のタイムコードを入れたものを、教室で0.7倍スロー再生し、5秒ごとの電車の速さを記録させます。

これからv−tグラフを描き、面積から出した駅間距離をパネルの「距離」の表示データと比べると、ピッタリ一致します。パネルの文字が小さいため、デジタルビデオの「再生ズーム」機能で拡大した、0.7倍スロー再生画像をダビングしておき、これを上映すると便利です。
また、アナログの電流計と速度計を一画面に撮影した別の映像からは、@電流のON-OFFと加速・等速の関係、A「電気ブレーキ」使用時の逆向き電流と減速の関係、B電流0なのに加速→下り勾配、C電流0なのに減速→上り勾配・曲線通過・空気ブレーキ等、などの関係が、確認または推察できます。

10.音の開口端反射のモデル実験(?)

「音波が開口端で反射されるというのがわからない」と生徒に言われませんか? 昔見た「川をさかのぼる津波」のビデオをヒントに、OHP用リップルタンクを用いた下図の装置で、開口端でパルス波の反射が見られるか、試してみました。

ふつうの水波実験のようにOHPでスクリーンに投影し、ビデオに撮ってスロー・コマ送り再生します。すると、開口端でのうず対の発生と離脱・球面波の発生に伴い、端に生じた反射波が水路をさかのぼる様子がわかります。反射波は端から出たところで発生しているようにも見えます(開口端補正に相当?)音波(疎密波)の反射とはだいぶ異なると思いますが、参考まで…。なお、下のビデオの12コマは1/30秒間隔です。

10 11 12